物理学者

曇り空、さて、布教誌配布に行くとするか。

布教誌配布は強制されているものではなく、個人の自由意思である。

この教団は当初入会に、試験があった。今は無いが。

私は法を求めていた、いわゆる

真理である。

必死で学び初級、中級、上級の

上級試験に合格した。


さて、どこから行こうか。

自宅から4キロほど離れた駅前をターゲットにした。

100軒ほど終わり空き地を探し

休憩した。

曇りなのに全身汗だくだ。

晴れの日だったらおそらく体力は

限界だったろう。

休憩場所から数メートル離れた所で畑の草刈りをしている人が

「こんにちは」と挨拶をしてくれた。

おじさん、畑やってんの…

家はどこ…

「すぐ近くだよ」

私も家庭菜園やってたけどなかなか難しいよね…

そんな話しをしていたが

おじさんの話し方が…

この人ただ者ではないなと感じていた。

おじさん、仕事はなにしてたのと

聞いてみた。

「私は、科学者、物理学者だ」

大学でも講義したし、今でも一部の判断事は私に依頼してくるよ」

私は今、物理学者と話してるんだと

思いながら、聞いてみた。

奥さんは…

「5年前に亡くなったよ」

その時どうでしたか…

「飯も喉を通らなかった」

淋しかっでしょう…

「それよりも、日常生活をどうしたらよいのか」

「そんな事で頭はいっぱいだったよ」

死について聞いてみた。

物理学者は言う。

「人間なんか、もともと無かったんだよ」

「あんた、70年前存在してたか」

「いなかったろう」

「今、たまたま居るだけで、もともとは無かったんだよ」

「妻も、もともと無かったんだ、

それが、たまたま私と一緒になって、また、元に戻っただけなんだ、私もそのうち、元に戻るだけ

だから死は怖くはないよ」

物理学者は言う。

マッチ棒と箱の理論。

「ここに、箱があるとする、その周りにマッチ棒があるとする、

マッチ棒の一本を箱にいれる、

その箱には、もともとは、マッチ棒は無かったんだ、その箱から

マッチ棒を取り出す、その箱には

マッチ棒は無い、それは、元に戻ったと言う事だよ、人間も同じだよ」

なるほど、そう言われれば、そうかも…

「ところでそのFってなにかね」

このFは戦闘機を意味してますと答えた…知ってるくせに、わざと質問してるなと私は思った、さっき

百里飛行場の話しをしていたし戦闘機の話しもしてたからな。

知らないはずないよなと思った。


ありがとうございました…と言う訳で、私は次なるターゲットに向かって走った、小学生の下校時間、

小学生が私を見て敬礼をした、

私も敬礼で答えた。

配布先で青年が私に敬礼をした

私も敬礼で答えた。


私のバイクは戦闘機をイメージして、戦闘機の尾翼をイメージしたものを付けているし私もヘルメットとサングラスなので、

パイロットにでも見えるのかな。

おそらくその青年は自衛官だろう。

何だか映画のワンシーンのようで

私はドッグファイトの後のトムクルーズにでもなったような気分になった。

とても爽やかなワンシーンだった。